★新聞の「定価販売」が崩壊する日

読売新聞の「新聞の定価販売を守れ」という主張が、ネットで失笑を買っている。
20日朝刊一面に掲載した「新聞の特殊指定『存続』84%望む…読売世論調査」ならびに社説「[新聞の特殊指定]活字文化の維持・振興に欠かせぬ」という記事。

公正取引委員会が、新聞や出版物などに適用している「特殊指定」の廃止(=「定価」の廃止…再販制度崩壊)について、読売新聞をはじめ新聞業界は断固反対する、という話。
読者へのアンケートでも、戸別配達維持や価格競争から守る「特殊指定」は存続すべき、という結果が出ている…とのことだが、いったい誰にアンケートをとったのか怪しいし、30代以下の若い世代のみにアンケートをとったら「紙の新聞なんかイラネ」という意見が大多数を占めるはずである。

ふだん、会社に盾突いている新聞労連も、「特殊指定」については、新聞協会の意見に同調。「新聞が平和と民主主義の発展に寄与する言論商品であるために、再販制度と特殊指定は不可欠だ」という声明を出している。

新聞販売(宅配)が、新聞を「押し売り」で売る「拡張団」や、コンビニなどのフランチャイズ制度よりひどい専売店制度など、前時代的な販売方法なのはよく知られている。

大手新聞社は、「大部数維持」のための「押し紙」(=新聞社が販売店に、配達分以上の新聞を送りつけること。押し紙は、専属の回収屋が回収しリサイクルなどに回す)制度など、エコロジーに逆行する行為をいまだに続け、地方新聞社は、新聞業の「新規参入」をことごとく妨害して自社の利益を守る。

新聞ジャーナリズムの腐敗については、出版社の週刊誌もよく取り上げるが、販売については「拡張団」の批判程度で、深く追究しない。あまり追究すると「再販制度廃止」につながり、再販制度に守られている出版社の首を絞める結果になるからだ。

ふだん、あらゆる「規制緩和」を主張している新聞や雑誌が、自らの業界については「規制が必要」とは変な話。定価廃止が即業界崩壊につながらないことは、「再販制度」が撤廃されて久しい薬や化粧品業界を見れば分かる。

ネットの普及など、若い世代の新聞離れについて、新聞業界でも、新聞が「必需品」から「嗜好品」に変化している実情を認めている。週刊誌でも「総合週刊誌」や「情報誌」が部数を下げているが、逆に趣味の雑誌など専門誌は好調。

朝日や読売の部数が低下しているのに比べ、東日本では夕刊を廃し朝刊紙に転換した産経の部数はむしろ増えている、という話もある。全国紙はいつまで「朝夕刊セット」にこだわるのだろうか。

定価販売維持、について新聞業界は「情報格差をなくすため」と主張しているが、「朝夕刊セット」が基本の新聞でも、読売の中部地方など、もともと夕刊を発行していない地域があったり、「早版」と「遅版」で内容が違うのも「格差」なのでは。「スクープ漏れ」防止のために、他社を出し抜くネタは「最終版」まで出さない、というのは「早版」読者をバカにしている。

…といろいろ書いてみたが、新聞を必要としない世代が多くを占めるようになれば、「紙」の新聞の退場は必至。旧来の「紙」にこだわり「死」まで作り続けるか、ネットに転換し新たなモデルを作るかは新聞社自身が決めること。「定価販売維持」など自らのことしか考えていない新聞業界を、生温かく見守っていきたいと思う。
出版業界における、再販制度に固執する問題については、稿を改めて書きます。こっちの“病巣”もかなり深い。

©★てれびまにあ。2003-2013